地震や台風、豪雨などの自然災害が相次ぐ中、企業には従業員の安全確保と事業継続のための備えが求められています。
オフィス防災とは、災害時に従業員の命を守り、混乱を最小限に抑えて早期の業務再開につなげるための企業の取り組みです。
備蓄や設備の整備だけでなく、社内ルールや体制づくりまで含めて考えることが重要です。
本記事では、オフィス防災の基本と、企業が今すぐ取り組むべき防災対策をわかりやすく解説します。
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オフィス防災が重要視されている理由

企業にとっての防災対策は、法的義務や事業存続に関わる経営課題です。対策が不十分なまま災害が発生すれば、法的責任を問われるだけでなく、企業の信頼を失うおそれもあります。
本章では、オフィス防災が重要視されている背景と、具体的なリスクについて解説します。
- 安全配慮義務やBCP(事業継続計画)への対応
- テレワーク普及による新たなリスク管理
- 家具転倒や停電などオフィスで起こりやすいリスク
企業に求められる防災対策の背景
企業に防災対策が求められる背景には、従業員の安全を守る法的責任と、事業を継続するためのBCP(事業継続計画)対応があります。
企業には、労働契約法に基づく「安全配慮義務」があり、従業員が安全に働ける環境を整える責任があります。対策が不十分なまま災害が発生し被害が生じた場合、損害賠償を請求されるおそれもあります。
この義務は正社員だけでなく、アルバイトや派遣社員にも及び、東日本大震災では安全配慮義務が裁判で争点となった事例もありました。
また、BCP(事業継続計画)は災害時の事業停止を最小限に抑え、早期復旧を図るための重要な取り組みです。東日本大震災ではサプライチェーンの寸断により、多くの企業が被災地以外でも影響を受けました。近年はテレワークの普及により、安否確認体制やマニュアル整備など、働き方の変化を踏まえた防災対策も求められています。
災害時にオフィスで起こりやすいリスク
災害時のオフィスでは、地震そのものによる被害だけでなく、二次災害や業務停止につながるリスクが発生しやすくなります。
まず注意したいのが、家具の転倒やガラスの破損、火災などによる二次災害です。
東日本大震災では、約20%のオフィスで家具類の転倒・落下が発生したとされています。特に高層階のオフィスは長周期地震動の影響を受けやすく、大型家具が倒れることでケガにつながるだけでなく、避難経路が塞がれる危険もあります。
また、停電や通信障害が発生すると、従業員の安否確認や業務連絡が困難になります。交通機関が停止した場合、従業員はオフィス内での待機を余儀なくされるため、飲料水や食料などの備蓄も欠かせません。
あわせて、「誰が判断を行うのか」「帰宅させるのか、オフィスで待機させるのか」といった行動基準を事前に決めておくことも重要です。判断が曖昧なままでは、現場の混乱を招くおそれがあります。
出典:「オフィス家具類の転倒・落下・移動防止対策」(東京消防庁)
オフィス防災の基本|まず押さえておきたい最低限の対策

災害時に従業員の命を守り、混乱を最小限に抑えるためには、オフィス防災の基本を押さえておくことが重要です。
防災対策は、備蓄や設備の整備だけでなく、行動ルールの整理や社内での共有まで含めて考える必要があります。
この章では、オフィス防災の基本となる5つの対策を紹介します。
・従業員の安全を守るためにやるべきこと
・防災備蓄として準備しておくこと
・災害時の安否確認・連絡体制を整える
・災害時の行動ルールを決めておく
・事業を止めないために備えておくこと
従業員の安全を守るためにやるべきこと
最優先で取り組むべきは、避難経路と非常口の確保です。
廊下や階段、非常口の前に物を置かず、常に通行できる状態を保ちましょう。あわせて自治体のハザードマップを確認し、避難経路が浸水や土砂災害の危険区域に含まれていないかも確認しておく必要があります。
避難場所は、建物外の一次避難場所と、広域避難場所などの二次避難場所を定め、全従業員に周知します。マニュアルはスマートフォンで確認できるPDF形式や携帯カードにしておくと、緊急時にも役立ちます。
次に、オフィス内の安全確保です。キャビネットや書棚は壁や床に固定し、倒れても避難経路を塞がない配置に見直します。窓ガラスには飛散防止フィルムを貼り、破片によるケガを防ぎましょう。
ヘルメットや防災頭巾は、正規・非正規を問わず従業員全員分を用意するのが理想です。ライトや軍手とセットで備え、来訪者や帰宅困難者の分も確保しておくと安心です。
防災備蓄として準備しておくこと
備蓄品は最低3日分、可能であれば1週間分を目安に準備します。
災害時に交通や物流が止まることを想定し、従業員がオフィス内で一定期間過ごせる量を確保しておくことが重要です。
▼飲料水・食料(1人あたりの目安)
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● 飲料水:1日3リットル ● 非常食:1日3食分 ● アルファ米やレトルト食品など、調理不要のもの ● チョコレート、飴などの嗜好品 |
▼トイレ・衛生用品
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● 簡易トイレ:1日5回×3日分(15回分) ● トイレットペーパー:1ロール ● 処理袋 ● ウェットティッシュ ● 生理用品 |
▼照明・電源・情報収集
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● 懐中電灯またはLEDランタン ● 乾電池 ● モバイルバッテリー(10,000mAh以上推奨) ● 手回し充電・ソーラー充電対応ラジオ |
▼救急・感染対策用品
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● 消毒液 ● 絆創膏 ● 包帯 ● マスク ● アルコール消毒 ● 液体歯磨き |
▼防寒・暑さ対策
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● 毛布またはアルミシート(1人1枚) ● 使い捨てカイロ(冬季) ● 冷却グッズ(夏季) |
備蓄品は、日常的に消費しながら補充する「ローリングストック」で管理するのがおすすめです。また、来訪者や帰宅困難者を想定し、全体の約10%程度の余裕を持たせておくと安心です。
災害時の安否確認・連絡体制を整える
災害時の安否確認は、「どうやって連絡を取るか」を事前に決めておくことが重要です。
安否確認システムやビジネスチャット、SNS、電話など手段は複数ありますが、最初に使う方法と、つながらなかった場合の次の手段をあらかじめ統一しておきましょう。
安否確認の優先順位(例)
① 安否確認システム
② ビジネスチャットやLINE
③ 電話
また、通信障害に備え、通常の連絡手段が使えない場合の方法も想定しておく必要があります。
通信が使えない場合の代替手段
- 公衆電話
- 災害用伝言ダイヤル(171)
- 災害用伝言板サービス
さらに、安否確認を始めるタイミングも明確にしておきましょう。 「震度5弱以上で発動」など、誰でも判断できる条件を決め、あわせて「誰が・誰に」連絡するのか、責任者不在時の代行者もマニュアル化しましょう。
安否確認で確認する内容は、必要最低限に絞ることが大切です。
- 本人・家族の安否
- 現在地
- 出社や業務継続が可能か
あわせて、在宅勤務中や外出先で被災した場合の報告方法も事前に定めておきましょう。連絡先情報は常に最新の状態に更新し、手順を全従業員に周知しておくことで、災害時でもスムーズな安否確認が行えます。
災害時の行動ルールを決めておく
災害時に混乱を防ぐためには、災害の種類によってあらかじめ行動ルールを決めておくことが重要です。
地震は突発的に発生するため、まずは机の下などで身を守り、揺れが収まってから避難行動に移ります。一方、水害は事前に予測できるケースが多いため、気象警報や注意報を常に確認し、早めの帰宅指示やリモートワークへの切り替えの判断も大切です。
あわせて、出社・待機・帰宅の判断基準を明確にしておく必要があります。
たとえば、「震度5強以上は自宅待機」「計画運休時は出社不要」「発災直後は一斉帰宅を控え、安全を確認したうえで順次帰宅する」など、具体的な基準を示しておくと、従業員が迷わず行動できます。
さらに、役割分担の明確化も欠かせません。誰が意思決定を行い、誰が避難誘導や安否確認を担当するのかを事前に決めておきます。担当者が不在の場合に備え、代行者を指定しておくことも重要です。
これらの行動ルールはマニュアルにまとめ、クラウドと紙の両方で保管しておくと、通信トラブルが発生した場合でも対応しやすくなります。
事業を止めないために備えておくこと
従業員の安全確保とあわせて、事業を止めないための備えも欠かせません。
まず重要なのが、業務データの保全です。クラウドや遠隔地サーバーに定期的にバックアップを取り、オフィスが被災しても業務データにアクセスできる体制を整えておきましょう。
次に、停電や通信障害が発生した場合の対応を想定します。
- 非常用発電機やポータブル電源による最低限の電力確保
- SNSやビジネスチャットなど、複数の通信手段の確保
- システム停止時に備えた手作業での対応手順のマニュアル化
あわせて、災害時に何を優先するのかを明確にしておくことも重要です。
- 絶対に止められない業務
- 早期復旧が必要な業務
上記を整理し、緊急時でも判断に迷わない基準を設けておきましょう。
さらに、オフィスが使用できない場合に備え、在宅勤務や代替拠点での業務継続も検討が必要です。VPN接続やWeb会議システムを平常時から整備し、場所を選ばず業務を再開できる体制を構築しておくことが、最低限の事業継続対策となります。
オフィス防災は定期的な見直しと更新が重要

防災対策は、一度整備して終わりではありません。年1回以上の防災訓練を実施し、マニュアルや体制が実際に機能しているかを定期的に確認する必要があります。新入社員や異動者に対しても、配属時に防災ルールを周知する機会を設けましょう。
また、備蓄品の賞味期限や使用期限は定期的に確認し、期限が近いものは入れ替えます。オフィス移転やレイアウト変更を行った際は、避難経路の再確認、備蓄品の配置見直し、マニュアルの更新を忘れずに行う必要があります。
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